日替彼女

気持ちの醒めない日常


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ゆう 〜パン屋さん〜2

ゆうは、水曜日が待ち遠しかった。

 

新作のパンづくりも今まで以上に頑張った。

 

お酒に合うパンになるように研究もした。

 

ただ、剛が来た時褒めてもらいたいがために。

 

 

 

その日は、朝から暑い夏の日だった。

 

剛は、サイクルキャップを被り、サングラスをおでこにつけてお店に訪れた。

 

いつものように壁に自転車を立てかけ、パンの香りでいっぱいの店内に入り「こんにちは」といつもの優しい口調でゆうに挨拶をする。

 

「こんにちは、今日の新作は・・・」と説明する。

 

「じゃーそれと、」続いて2つ手に取りレジに来る。

 

パンを一つずつ袋に丁寧に入れていると、「土曜日にパンを注文したいのだけど」と剛がいう。

 

ビックリしてパンを落としてしまう。慌てて拾い、新しいパンにしていると「そのパンもお会計に入れといてください。」と剛が言う。

 

「わたしのミスなんで落としたパンの分のお代は結構です。」というと。

 

「僕が急に話しかけたから、請求して。請求してくれないと僕が来づらくなる。」

 

ゆうはそう言われると、ちょっと仏頂面になり「わかりました」と小さな声で言う。

 

剛に「仏頂面、可愛いね。」と笑顔で言われ、真っ赤になるゆう。

 

それを見て、剛は笑う。

 

「もう。」と言ってしまうゆうに「ごめん、ごめん、あまりのも可愛くて」と言われ耳まで赤くなってしまう。

 

それを見てニコニコしながら、「土曜日お店のオススメの何種類でもいいから30個欲しい。この時間には取り来たいんだけど、大丈夫ですか?」と剛は言う。

 

「大丈夫です。念のため連絡先などよろしいですか?」というと小さな正方形の名刺を渡された。

 

「可愛い」とゆうはいいながら名刺を見ると、そこには、名前と住所、電話番号それに社名など載っていた。

 

「うちが職場なので」と剛が言うと「わかりました」とゆうは答えた。

 

名刺からは何の仕事なのかはわからない。

 

でも、「自転車のひと」から剛と名前に変わり電話番号などもわかった。

 

ゆうにとっては宝くじが当たったくらいに心の中は喜んでいた。

 

 

 

 

仕事が終わり、剛の名刺を財布にいれお店を後にする。

 

ゆうは、いつもより店を2時間も早く閉めた。その理由は、剛の名刺にあるSNSのアカウント。そのアカウントから剛のことをもっと知りたいと思ったのだ。

 

自宅に戻り、ベッドに潜り込み、はじめてラブレターをもらった少年のようにドキドキしながらアカウントから剛のページを見た。

 

そこには多くの剛がデザインした作品がズラーッと並んでいる。

 

その中にはなぜかところどころにゆうの作ったパンの写真があった。

 

その画像を指で指定すると、コメントが書いてある。

 

厳しいことも書いてあるコメントもあるのだが、いつも「このパンを考えてくれた女性にありがとう」と書いてあった。

 

ゆうは、昼間同様に耳まで赤くなってベッドの中でにやにやしてしまった。

 

次の日、午前中にどうしてもゆうは配達を理由に剛の素顔をすこしでもみたいと思い電話をした。

 

電話から剛の声が聞こえる。ゆうは配達をすることを言うと、剛は「お願いします」といい。

 

ゆうは「ありがとうございます」と伝え電話をきった。

 

土曜日当日、店を一旦閉めて、剛の家に注文のパンを届けにいく。

 

ゆうが剛の家に到着すると、剛は外で何かの準備をしていた。

 

大きな声で挨拶をして、剛に近づく。興奮気味のゆうは、足下に置いてある荷物に気づかずつまずきそうになった。

 

それを見ていた剛は素早くゆうを支える。

 

「大丈夫、怪我ない?」と聞かれたゆうは「大丈夫です」と答え、すっと剛から離れる。ゆうは庭を見渡すと、どうもバーベキューの準備をしていることに気づく。

 

その片隅に手作りのピザ釜を見つける。

 

「あ、ピザ釜だ」というと「まだ、一度も作ってない」と苦笑いしながらゆうに言うと。

 

ゆうは、「今度作っていいですか?」という。

 

そしたら、「ホント、作って作って」と剛が子供のような笑顔で答えるのをみて、ゆうは可愛いと思った気持ちとまたここに来れる喜びでニヤニヤ笑ってしまった。

 

パンを剛に渡し、お会計を済ませ帰ろうとするゆうに。

 

「もし来れたらお店閉めたら来て。この美味しいパンをつくるあなたを紹介したい」と言われ顔が赤くなりながら何度も頷き、家を後にした。

 

店に帰るとその後、店は忙しく片付けが終わった頃には10時を過ぎていた。

 

いつもなら、諦めて帰るのに今日はわざわざ電話して行ってよいか剛に確認の電話する。

 

剛はすぐにゆうの着信に出てこういう。

 

「みんな帰っちゃったけど、頑張ってピザ作ったけど食べる?」と言われ店を大急ぎで閉めて、剛の家に向かった。

 

屋外にいくつか照明がついていてその光の間に剛はいた。

 

剛はゆうに気づき、「ありがとね」という。

 

そして、ゆうを椅子に座らせてピザをお皿にのせスープとピザを出した。

 

お腹の空いていたゆうは、すぐに口に入れる。

 

ピザ生地が手作りなのか厚かったり薄かったりする生地にたっぷりのチーズとトマト、バジルの葉がのっているピザは、今まで味わったことない美味しさがあった。

 

「このピザ、美味しい」といい、その反応に剛の顔がすこし赤くなったように見えた。

 

「良かった」とホッとした様子で剛は言うとゆうの隣の椅子に座りピザを頬張る。

 

冷たく冷えたビールを飲みながら、ゆうが「ビールと合いそうですね」と言う。

 

「飲むならもってくるけど、車で帰れないよ」というと「家、近くだから歩いて帰ります」と伝えビールをもらいピザを食べた。

 

たわいもない話を二人でして、さー片付けるかと剛が片付けはじめるとゆうは、椅子の上でウトウトはじめてしまった。

 

剛は、それを見て自分の上着をかけてあげ一通り片付けが終わると、ゆうに話しかけ「送ってくよ」といい立たせようとしたが、酔っぱらっていて上手く立ち上がれず剛にもたれかかってしまった。

 

剛は、「おんぶしてあげるからほら」といい、ゆうをおんぶして月明かりの中をしっかりとした足取りでゆうの自宅へと向かう。

 

ゆうは、このまま時間が止まってしまえばいいのにと思いながら剛の背中にギュッと抱きついて自宅の前まで送ってもらうとどうにか玄関までたどり着き、剛に「バイバイ」と手を振り家の中に入りそのまま寝て朝を迎えたのだった。